[[📒Articles]] > [[📒2023 Articles]] ![[2023-10-28.jpg|cover-picture]] #2023/10/25 に[[HHKB]]の最新シリーズである[[HHKB Studio]]が発表されました。2～3日使ってみましたので、購入の経緯と購入後のレビューをご紹介します。 > [!caution] > 本記事では[[HHKB Studio]]についての説明はしません。既にご存じという前提で話を進めていきます。[[HHKB Studio]]のスペックや機能、外観についてはWebに良記事が沢山公開されていますので、そちらを参考いただければと思います。 > [!caution] > 本記事では価格やそれに対する妥当性については一切触れません。それらは利用者の状況によって変わるものであるため、読者の中で判断いただくのが適切であると考えています。 > [!caution] > 本レビューの内容は [[📕tadashi-aikawa]] の個人的な見解と感想です。客観的に他デバイスとの比較を行ったものではありません。個人的感情によるエモい内容も多分に含みます。あくまで1人のユーザーがリアルに感じたこととが書かれているという理解でお読みください。 ## 購入のきっかけ ### 購入するつもりはなかった #2023/10/25 に日が変わった直後、[[𝕏]]が何やら賑わっていました。どうやら例の新モデルが発表されたようだ... とのことで、早速プロモーション動画を眺めてみました。  **『ジェスチャーパッドは気になるけど、今回は様子見でいいかもなあ...』** 正直なところ、はじめは購入する気はありませんでした。理由は以下の通りです。 - [[HHKB HYBRID Type-S]]の無刻印モデル + [[SlimBlade Pro Trackball]] で不満に思ったことがない - [[HHKB HYBRID Type-S]]を無刻印化してからまだ時が経っていない - [[HHKB Studio]]は[[静電容量無接点方式]]ではなく[[メカニカルスイッチ方式]] - サイズが大きく、重量が重くなり[[HHKB]]らしいコンパクト/ミニマルの美しさがない - [[ThinkPad T440s]]利用時も[[トラックポイント]]は使わなかった (使いにくかった) - (予想通り) 高い ネットでもよく見る理由です。特に[[静電容量無接点方式]]ではなく、苦手意識のあった[[メカニカルスイッチ方式]]になったことも大きな理由でした。案の定、この点は[[𝕏]]でも多くの人が言及、不安視されていました。そして床に就きます。 ... 翌朝、改めて[[𝕏]]を確認しました。昨夜よりも[[HHKB Studio]]の話題は多く、いつにも増して購入をためらっている人が多いように見受けられました。 ### 突如湧き上がる危機感 **『やっぱそうだよなあ... ですよねー』** 他の[[HHKB]]ユーザーも同じようなことを考えている方が多く、自分の感情は間違ってなかったという安堵感。それと同時に同じ...いやそれ以上の**危機感**を覚えました。 **『みんなと同じ考えを持っているということ... それ非常に危険なことでは...?』** **『時代の先端を渡り歩いている人は、常に大衆の批判を浴びながら前進を続け、時代のデファクトスタンダードを作り続けてきたはず。』** **『自分で今の環境をベストだと思っていること... これは成長を諦めたということではないか? 悪い意味で[[コンフォートゾーン]]に留まってしまっているのでは...』** **『[[メカニカルスイッチ方式]]という仕様だけを見て、品質に対する先入観を持ってしまっていいのか? 最後に[[メカニカルスイッチ方式]]を使ったのは5年以上も前だし進化しているのでは..?』** **『[[トラックポイント]]は使いづらかったと言ったが、慣れるための努力をしたのか? 数日使ったくらいで決めつけてしまったのではないか? [[トラックボール]]のときのように1ヶ月以上使わなければ判断できないのでは...?』** 次から次へと湧いてくる...己に対する危機感。[[HHKB Studio]]は何年もの間マヒしていたこの危機感を感じさせてくれたのです。 ### お前にとって、[[HHKB]]とはなんなのだ? 10年以上利用し続け、未だに不満を感じたことはほぼゼロである素晴らしいブランド、[[HHKB]]。そしてそれを世に生み出し続けていく[[PFU]]。そして問います。 **『お前にとって、[[HHKB]]とはなんなのだ?』** そう、信頼です。[[HHKB Professional JP]]に始まり、[[HHKB Professional JP Type-S]]、[[HHKB HYBRID Type-S]]と[[HHKB]]のリレーを続けていくうちに、[[HHKB]]というブランドや[[PFU]]というメーカーへの信頼はゆるぎないものになっていました。 **『その[[PFU]]が[[HHKB]]ブランドの名を引き継いで[^1]、次世代のチャレンジングなモデルを発表してきたのだ。そのような製品が期待を裏切るような代物だろうか...?』** そして、自分自身もこの時代の変化に取り残され、27年前の製品ラインナップに骨をうずめてしまって良いのだろうかという想いが芽生えます。 ### 最後に背中を押してくれたのはメカニカルの有識者 購入まであと一歩というところで、最後に背中を押してくれたのはメカニカルキーボード有識者による[[𝕏]]の投稿でした。  最近の[[メカニカルスイッチ方式]]はやはり違そう...  総合力で決まると... そして[[PFU]]ならそこは必ず仕上げてくるに違いない..!! そして極めつけは...  <b style="font-size: 250%">『ですよね！！』</b> ということでポチりました。まあ最悪使いにくくて使わなくなってしまっても、[[PFU]]や[[HHKB Studio]]の未来に対する投資だと思えばいいだけです。誰も購入しなかったら、たとえ良いモノであっても未来への道は途絶えますからね😊 [[Amazon]]で購入したのが10:15。11時くらいに見たら品切れになっていたので間一髪というところでした。**『人柱になるぞ！』** と意気込みも湧いてきましたね💪 ![[PXL_20231026_113456230.PORTRAIT.jpg|frame]] *[[マサハル]]とHHKB Studio* ## 筆者の経歴 ここから本題に入ります。がその前に筆者の[[HHKB]]に関する経歴についてご紹介させてください。というのも、キーボードの評価というものは、ユースケースや利用暦によって大きく異なるためです。 ### キーボード利用暦 高級キーボードを使い始めたのは2011年からです。 - 2011年 [[REALFORCE]] 変荷重モデルを利用開始 - 2012年 [[HHKB Professional JP]] を利用開始 - 2012年 [[HHKB Professional JP Type-S]] を利用開始 - 2017年 [[REALFORCE 91UG-S]] を利用開始 - 2019年 [[HHKB Professional HYBRID Type-S 日本語配列／墨]] を利用開始 - 2021年 [[HHKB Professional HYBRID Type-S 日本語配列／雪]] を利用開始 - 2021年 初の無刻印化 - 2023年 [[HHKB Studio]] を利用開始 一度、[[REALFORCE 91UG-S]]に戻ったのは腱鞘炎で[[HHKB Professional JP Type-S]]を使うのが困難になったからです。[[HHKB Professional HYBRID Type-S 日本語配列／墨]]が発売されたタイミングでは完治していたので元に戻しました。 配列はすべて日本語配列です。理由は [[📗日本語配列のキーボードを使う]] をご覧ください。 ### 利用用途 職業がエンジニアなので以下の用途で使うことが多いです。 - プログラミング - ドキュメント作成 - チャットやメール - ターミナル操作 プライベートでも基本的な利用用途は同じです。ゲームのプレイ、音楽・絵の作成などは基本的に行いません。 ### 利用シーン 仕事でもプライベートでも使います。 家や職場デスクでは外部モニタを数枚使っています。仮想モニタ含めるとどちらも5～6画面を操作することなり、以下のような感じです。 ![[Pasted image 20211027193226.png|frame]] *2021年10月時点 自宅での開発状況* カフェやコワーキングスペース、職場MTGスペースで使うときは[[尊師スタイル]]です。[[キーボードブリッジ]]や[[Typesticks]]は利用せず、ノートPC付属キーボードの上にドカっと置いています。 ![[PXL_20230906_095220230.jpg|frame]] *コワーキングスペースで尊師スタイル* パームレストは[[FITTIO MOH-FTP]]、ケーブルは有線で[[U2C-CCL05NBK]]、[[HHKB吸振マットHG]]を底面に貼っています。 ### 自作キーボード暦 自作キーボードを作ったことはありません。工作が大の苦手であり、はんだ付けすらストレスを感じるくらいです。なので、自作したいと思ったことはありません。(誰かが作ってくれるなら歓迎ですが...🙏) ### [[メカニカルスイッチ方式]]の利用暦 [[メカニカルスイッチ方式]]のキーボードを利用したことはありません。店頭で少し試し打ちをしたことはありますが、マシンにつないでリアルなユースケースで使ったことはありません。 ### [[ポインティングデバイス]]の利用暦 [[HHKB]]を使い始めてすぐに[[トラックボール]]を使うようになりました。現在でも使っています。 - ～2013年 マウスを使用 - 2013年 [[SlimBlade Trackball]] を利用開始 - 2022年 [[SlimBlade Trackball]] を買い替え (故障) - 2023年 [[SlimBlade Pro Trackball]] を利用開始 [[タッチパッド]]は[[Windows]]のラップトップPCや[[iPad Pro]]で使っています。ただ、[[トラックポイント]]をまともに使ったことはありません。 ### キーカスタマイズ暦 [[Change Key]]と[[AutoHotkey]]を使って以下のようなカスタマイズを行っています。 - [[Change Key]] - 一部のキーを入れ替え - [[AutoHotkey]] - キーバインドに異なるキーや操作を割り当てる - 全5つの仮想レイヤー定義 - アプリケーションやプロセスごとに異なる定義の割り当て - [[Vim]]のような[[Leaderキー]]の割り当て - マウスの操作 - マウスジェスチャーの自作 [[AutoHotkey]]のカスタマイズはかなりガチな自信があります。利用しているスクリプトは[[GitHub]]で管理しておりますので、気になる方はご覧いただければと思います。 <div class="link-card-v2"> <div class="link-card-v2-site"> <img class="link-card-v2-site-icon" src="https://github.githubassets.com/favicons/favicon.svg" /> <span class="link-card-v2-site-name">GitHub</span> </div> <div class="link-card-v2-title"> GitHub - tadashi-aikawa/spinal-reflex-bindings-template: This repository is the Autohotkey KeyCustomized Project which is applicable to only mine. </div> <div class="link-card-v2-content"> This repository is the Autohotkey KeyCustomized Project which is applicable to only mine. - tadashi-aikawa/spin ... </div> <img class="link-card-v2-image" src="https://opengraph.githubassets.com/14a20bf1141ec5459a1bf11c9c794729ba4677ec9deb61dd0383587bd4bf4cc6/tadashi-aikawa/spinal-reflex-bindings-template" /> <a href="https://github.com/tadashi-aikawa/spinal-reflex-bindings-template"></a> </div> ## 感想 ここからは項目ごとに感想を書いていきます。印象の良かった点から順番に。 ### 😆今までとは違う... けど実は凄いんでは...と思わされるタイプ感 商品が届いたあと、ほとんどの方が最初に確認したくなるのがタイプ感だと思います。 - [[HHKB HYBRID Type-S]]のタイプ感とはかなり異なる - どちらかというと[[REALFORCE 91UG-S]]に近い - [[HHKB]]シリーズでは[[HHKB Professional JP Type-S]]が一番近い 個人的には[[REALFORCE]]と[[HHKB]]の打鍵感を足して2で割り、荷重を35～40gくらいにしたような感覚です。1日ほど使ってみた感想は以下の通りです。 - **[[HHKB HYBRID Type-S]]よりもかなり静か** - [[メカニカルスイッチ方式]]とは思えない - [[HHKB HYBRID Type-S]]よりも押している感がない - 左小指や薬指が以前より痛い 前評判通り、[[メカニカルスイッチ方式]]としてかなり完成度が高いと感じました。今までのシリーズとは感覚が異なり、タクタイル感もなく音が小さいため、**押している感がない**というのは大きなポイントです。[[HHKB]]の気持ちよさはあの押している感にあり、どうしても他を受け付けないという考えをお持ちなら、後悔するかもしれません。 私もはじめは『[[HHKB HYBRID Type-S]]に戻りたい』と何度も思いました。休憩時間に[[HHKB HYBRID Type-S]]をタイプして『あーこれだよこれ』という... 実家に帰ってきた安心感のようなものを感じてました。しかし、**1日使った時点でその想いは消えました**。別に[[HHKB Studio]]でもいいかなと。むしろ[[HHKB Studio]]の方がなんかいいなと思えるくらい。10年以上も毎日使っており、身体の一部としてしみ込んでしまったHHKB Professionalシリーズの感触、それを1日でほぼ無効化するって... 素直に[[HHKB Studio]]の仕上がりは素晴らしいと思いました。 残された課題は左小指と薬指の痛みです。これは時間が経てば、力加減などに慣れて軽減されるのではと思いたいですね。[[REALFORCE 91UG-S]]をはじめて使ったときも、キーが軽すぎて逆に指が痛くなったのでそれと同じかなと思いました。 ### 😀人によっては超刺さるであろうキーマップ変更ツール [[HHKB Studio]]のキーマップツールは以下の点で素晴らしいと思います。これはキーボードのレイアウトや挙動をカスタマイズしたい人にとっては超刺さるのではないかと思いました。 - Fnが3つになり、+3レイヤーのキーマップを定義できる - 複数キー同時押しにリマップできる - [[HHKB Studio]]本体に対して設定を保存/読み込みできる ただ、個人的には、この2日間で色々設定してみたものの、 **キーボードについては最終的にデフォルトのまま使うことにしました**。これはキーマップ変更ツールが使いにくかったり、その挙動に問題があるわけではありません。私の[[#キーカスタマイズ暦]]からして、カスタマイズは[[AutoHotkey]]で十分という結論に(現時点では)達したからです。 一方、[[ジェスチャーパッド]]と[[ポインティングスティック]]の設定は変更しました。 ![[Pasted image 20231028161131.png|frame]] *HHKB Studioのキーマップ設定* 変更概要は以下の通りです。 ① 左[[ジェスチャーパッド]]は上下のスクロール ② 右[[ジェスチャーパッド]]はズームイン/ズームアウト ③ 正面[[ジェスチャーパッド]]は無効化 ④ [[ポインティングスティック]]のスクロール方向は逆方向 ⑤ [[ポインティングスティック]]のクリック安定はOFF [[ジェスチャーパッド]]を利用するとどうしてもホームポジションが崩れますし、単押のボタンは割り当てても実用的ではないので、消去法でスクロールとズームにしました。スクロールは[[タッチパッド]]がなく、右手が塞がっている状況で使うと結構便利だったりします。なお、正面の[[ジェスチャーパッド]]は操作するコストが高いので無効化しました。 [[ポインティングスティック]]のスクロール方向は、[[タッチパッド]]のように逆方向にしました。はじめは順方向にしていましたが、個人的に逆方向の方が直感的だったため変更しました。 [[ポインティングスティック]]のクリックは反応がかなり悪かったので無効化しました。強く押して運が良ければ反応するくらいの感度です。[[マウスボタン (HHKB Studio)|マウスボタン]]がかなり押しにくいので、この感度が上がって左クリックとして使えるようになると嬉しいですね。ファームウェアバージョンアップで改善されることを期待しています。 ### 🙂慣れれば伏兵となれそうな[[ポインティングスティック]] [[ポインティングスティック]]は利用経験がなかったので、まだ慣れません。そのため、現時点ではどうしても[[タッチパッド]]や[[SlimBlade Pro Trackball]]の方が便利で効率的です。油断すると、無意識で手がそっちに動いてしまう状況です。**ただ、[[トラックボール]]のときと同じく、1ヶ月利用して慣れてみれば評価が変わる可能性はあります。** とはいえ、[[ポインティングデバイス]]の操作をすべて[[ポインティングスティック]]で賄うことは非現実的だと思います。なぜなら、**[[タッチパッド]]や[[トラックボール]]は5本の指をすべて活用できるのに対し、[[ポインティングスティック]]の操作は基本的に指1～2本で行うもの**だからです。特にポインタの移動は指1本なので勝てるわけはありません。また、画面が広いときに遠くまで移動するのも、[[タッチパッド]]や[[トラックボール]]に比べて難しいでしょう。感度を上げすぎると今度は微調整ができなくなりますので...。 そこで発想の転換が必要です。すべてを[[ポインティングスティック]]でやろうとするのがそもそも間違いなのです。[[ポインティングスティック]]はあくまで[[ポインティングデバイス]]としての選択肢の1つ。それが最適なシーンでのみ利用すればいいのです。たとえば以下のようなシーンです。 - キー入力中に、少しだけポインタを移動してすぐキー入力に戻りたいとき - 狭い画面で作業をしており、精密な移動が求められないとき 上記のケースは[[マウス]]に対して[[トラックボール]]が便利なユースケースでもありました。右手をキーボードの横にスライドさせ、DJのようにボールを転がして、戻り際にクリックする動き... この理論値は[[ポインティングスティック]]の方が速いでしょう。ただ、[[ポインティングスティック]]に慣れる意味でも、しばらくの間は[[ポインティングスティック]]しばりの生活を続けてみようと思っています。 また、『[[ポインティングスティック]]を使えばホームポジションを崩さずに操作ができる..!!』という触れ込みも過信しない方がいいと思います。右手の位置はそれなりに左下へとスライドさせる必要があります。他の方法より移動距離が圧倒的に短いのは魅力ですが、[[尊師スタイル]]であればもう少し移動して[[タッチパッド]]に移動した方が、その後の操作も含めると効率的だったりします。 最後に1つだけ。[[ポインティングスティック]]周辺のキー (`B` `G` `H` `N`) を触るとき、誤って[[ポインティングスティック]]に当たってしまう (&押せない) のが地味にストレスでした。ただ、これは慣れの問題だと思います。[[ポインティングスティック]]がそこにある以上、なんとかしろというのは無理難題でしょう。実際、2日目になったら、[[ポインティングスティック]]に指が当たる頻度は激減しました。当たってしまってもキー入力には支障がない (ちゃんと入力はできる) レベルなので我慢できます。使い続ければ全く当たらなくなる日もそう遠くはないと信じています。 ### 🙂可能性を感じさせるマウスボタン スペースキーの下に位置する3つの[[マウスボタン (HHKB Studio)|マウスボタン]]。慣れが必要だと思いますが、この3キーには無限の可能性が秘められていると思います。 使い始めて1日は、狙ったボタンを押すことさえもできませんでした。あんなにサイズが大きいのに！ それもそのはず、この世に生を受け初めてキーボードを触ってから今までずっと **スペースキーはキーボードの下端である** と脳が刷り込まれているのだから。それを克服するには、マウスより[[トラックボール]]の方が操作しやすくなるくらいの時間はかかると思っています。具体的には1～6ヶ月くらいの期間かなと。 加えて、最初は自身の脳に直感的なキーマップにしようと30分おきに変更して試していました。しかし、最終的にはデフォルト設定に戻しました。なんだかんだ言っても、この割り当てが一番理にかなっていると感じたのです。 特に右の[[マウスボタン (HHKB Studio)|マウスボタン]]は『左クリック』にしたり『Fn2』にしたりと試行錯誤しました。『左クリック』にすると、中央とあわせて『左クリック』の領域が増えるので、[[ポインティングスティック]]利用時の左クリック実行コストが下がります。また『Fn2』にすると、Fn2レイヤーのキー入力がしやすくなり、操作の幅が増えます。方向性は違いますが、どちらも魅力的に感じていました。 ただ、私の場合は[[#キーカスタマイズ暦]]で初回したとおり、その辺の制御は[[AutoHotkey]]で行っています。Fn2キーレイヤーの操作は同時押しですが、[[AutoHotkey]]の自作レイヤーならば同時押しナシで割り当て可能です。しかも、[[マウスボタン (HHKB Studio)|マウスボタン]]はメインのキー配列部分と高低差があり、特にパームレストを使っている場合は非常に押しづらいです。親指で押そうとしたら、どうしてもホームポジションを下にずらす必要があります。それならば、初めからレイヤー操作は[[AutoHotkey]]の範疇に留めた方がいいだろうと判断しました。 設定を戻した理由は他にもあります。マウスジェスチャー機能を久々に活用したくなったからです。マウスジェスチャーの実行しやすさは、[[トラックボール]]や[[タッチパッド]]よりも優れていると感じました。[[ポインティングスティック]]が敏感なため、右の[[マウスボタン (HHKB Studio)|マウスボタン]]を押しながら、少しスティックに力を伝えるだけで動作します。私は以下のような割り当てをしています。 | 操作 | 機能 | | ---------------------- | ---------------------------------- | | `右マウスボタン` + `↓` | 次のデスクトップへ移動 | | `右マウスボタン` + `↑` | 前のデスクトップへ移動 | | `右マウスボタン` + `←` | ウィンドウを左側に移動 (`Win + ←`) | | `右マウスボタン` + `→` | ウィンドウを右側に移動 (`Win + →`) | ※ `↑/↓/←/→` は[[ポインティングスティック]]の上下左右方向 ### 🙂携帯性と引き換えに安定感をもたらすデザイン [[HHKB Studio]]は[[HHKB HYBRID Type-S]]と比較して300gほど重くなっています。もともと500g超だった重量を考えると、300gは非常にインパクトの大きい数字でしょう。私も持ち運んでみましたが、明らかに鞄が重くなった実感がありました。 ただ、悪いことばかりではありません。重くなったことで今までよりもキーボードが安定しているように思えます。[[REALFORCE]]に近い感じです。今までの[[HHKB]]は、特に[[尊師スタイル]]のときは、ポジションに気を付けないと不安定さを感じることがありました。しばらく作業している位置が微妙にずれてしまい微調整をすることも多かったと思います。[[HHKB Studio]]になって、その回数は激減したと思います。 また、[[尊師スタイル]]も安定しました。重さによる安定感もありますが、それ以上に形状による恩恵が大きいと思います。まず、縦の底面長さが増えたことにより、ノートPCのキーボードを覆い隠せるようになりました。 ![[Pasted image 20231028165827.png|frame]] *HHKB StudioはノートPCのキーボードを覆い隠せる* これにより、[[HHKB]]端の部分で誤ってノートPCのキーを押してしまうというトラブルが発生しなくなりました。また、底面の角にはそれぞれゴムによる厚みがついています。 ![[Pasted image 20231028165856.png|frame]] *底面ゴムの厚み* この厚みにより、強めにキーを押したとき[[HHKB Studio]]の底面でノートPCのキーを押してしまう...というトラブルが発生しなくなりました。 > [!warning] > ノートPCのキーボード形状によっては干渉する可能性があります。周辺よりも凸となっているキーボードをお使いの場合はご注意ください。 以上の変更により、ノートPCでの[[尊師スタイル]]体験は格段に向上したと思います。ここは[[PFU]]の掲げるSTUDIO感にもマッチしているなと感じました。[[タッチパッド]]が少し隠れてしまう懸念こそありますが、[[ポインティングスティック]]を多用できれば大した問題にもならないかなと思っています。 ### 😅期待厳禁な[[ジェスチャーパッド]] 唯一期待外れだったのは[[ジェスチャーパッド]]です。まあ期待しすぎた私も悪いのかもしれませんが...。 macやiPadのタッチパッドをイメージされている方は確実に後悔すると思います。Windowsレベルのイメージであっても、『キーボードで入力をしながらノールックでサッと[[ジェスチャーパッド]]を操作して、すぐホームポジションに戻り入力を続ける...』みたいな使い方を想定している場合は要注意です。恐らく難しいでしょう。 これらの不満に対する最大の原因は感度のコントロールにあります。Windowsでノートパソコンにタッチパッドが搭載された頃のあの使い勝手に近いです。反応して動くけど、動くだけ...という感じです。今後ファームウェアのアップデートで改善されると嬉しいですが、もしハードの造りによるものなら期待せずに諦めた方がよさそうですね。 本当はすべて無効化しようと思いましたが、スクロールとズームだけはシーンによっては使い道があるので残しました。[[ポインティングスティック]]でもスクロールとズームは可能ですが、片方の手が塞がっているときは便利だったりします。 > [!hint] > [[ポインティングスティック]]の操作 > > | 名称 | 操作 | > | ---------- | --------------------- | > | スクロール | `Fn2` + `↑/↓` | > | ズーム | `Fn2` + `Ctrl` + `↑/↓` | > > `↑/↓` は[[ポインティングスティック]]の上方向または下方向 > [!attention] > [[ポインティングスティック]]に触れたまま[[ジェスチャーパッド]]を操作すると、反応しなかったり予期せぬ動作をすることがあります。[[ジェスチャーパッド]]に触れるときは[[ポインティングスティック]]を触らないようにしましょう。 > > ※ [[ポインティングデバイス]]に関する操作だからかもしれませんが... ## おわりに [[HHKB Studio]]について、購入の経緯と2～3日利用したレビューをまとめました。 [[HHKB Studio]]は今までの[[HHKB]]と見た目は似ていますが、予想以上に別の製品だと思います。よく言われていますが、今までの[[HHKB]]がマイナーチェンジしたものと考えて購入すると、短期的には後悔するかもしれません。 しかし、いつまでも同じモノを最高と信じて使い続けるのもまたリスキーだと思います。代表的な例がガラケーとスマホです。私はスマートフォンが出始めた2006年頃、スマートフォンの魅力について力説していましたが、ほとんどの人には鼻で笑われました[^2]。それが今やどうでしょう。2010年付近に発売されたiPhoneを皮切りに、今ではガラケーを使っている人が笑われる世の中になってしまいました。その間、わずか15年です。 私が初めて使った[[HHKB]]である[[HHKB Professional JP]]の発売日は2008年です。ちょうど15年です。そのタイミングで登場した[[HHKB Studio]]、次世代に向けた[[HHKB]]。5年という開発期間から[[PFU]]の本気度が伝わってきます。このビッグウェーブに乗らずして、いつ乗るというのでしょうか? 人は元来[[コンフォートゾーン]]からの脱却が難しい生き物だと思います。しかし、[[コンフォートゾーン]]にいる限り、それ以上の成長は望めません。『そもそもキーボードに対してこれ以上成長なんてしたくない/しなくていい』というのであれば、留まるのも戦略の1つでしょう。しかし、更なる高みを目指したい.. ともし考えているのであれば、自身を成長されることにより、[[HHKB Studio]]のポテンシャルを最大限に引き出すための険しい道を選択するのも刺激的でAmazingなのではないでしょうか。 そして、そこに必要なのは **今までの[[HHKB]]と比較して不満を述べること** ではないと思います。**新しい次世代へのアイテムとして変化を受け入れ、それに適応していく姿勢**こそが大事であると。それこそが[[HHKB Studio]]をポチった最大の理由です。 [^1]: [[HHKB Studio]]はHHKB Professionalとは別のラインナップですが、HHKBという名称がついているので [^2]: まあ当時はハードもソフトも不安定で『携帯電話なのに電話ができないなんて...w』という問題がありはしたのですが..😅