[[📒Articles]] > [[📒2022 Articles]] ![[2022-03-06.jpg|cover-picture]] [[Obsidian Publish]]で[[Minerva]]を1年以上運営しているので、改めて運営戦略についてまとめてみました。 ## はじめに 本記事は以下のような方をターゲットにしています。 - [[Obsidian]]を使ったことがある - [[Obsidian Publish]]を知っている - [[PKM]]の概念を知っている 本記事の中でこれらの説明はしません。 ## [[Minerva]]のあゆみ [[Minerva]]は私が[[Obsidian Publish]]で運営している[[PKM]]の公開サイトです。2021年1月末からはじめました。この記事も[[Minerva]]の一部([[📒Articles]])です。 <div class="link-card"> <div class="link-card-header"> <img src="https://publish-01.obsidian.md/access/35d05cd1bf5cc500e11cc8ba57daaf88/favicon-64.png" class="link-card-site-icon"/> <span class="link-card-site-name">minerva.mamansoft.net</span> </div> <div class="link-card-body"> <div class="link-card-content"> <div> <p class="link-card-title">Minerva</p> </div> <div class="link-card-description"> 本サイトの名前。 由来は詩・医学・知恵・商業・製織・工芸・魔術を司るローマ神話の女神 Minervaから。現代ではその中でも、知恵の女神としての側面から教育現場で取り入れられることがあるらしい。 </div> </div> <img src="https://publish-01.obsidian.md/access/35d05cd1bf5cc500e11cc8ba57daaf88/Notes/attachments/minerva-image.webp" class="link-card-image" /> </div> <a class="internal-link" data-href="Minerva" ></a> </div> [[Minerva]]に関する主なイベントは以下の通りです。 | 時期 | イベント | | ------------- | ----------------------------------------------- | | 2021年1月1週 | [[Obsidian Publish]]開始 | | 2021年1月2週 | [[Mkdocs]]で運営していた[[PKM]]を運営停止(移行) | | 2021年1月3週 | Publishサイト名を[[Minerva]]に変更 | | 2021年5月2週 | カスタムドメイン対応 | | 2021年5月4週 | [[Home]]のデザインを刷新 | | 2021年6月4週 | ブログを[[Minerva]]に移行 | | 2021年7月4週 | [[🦉Embedded Code Title]]でコードブロック強化 | | 2021年7月4週 | カード形式リンクに対応 | | 2021年8月3週 | [[Change log]]の記載開始 | | 2021年9月2週 | [[ADR]]の導入 | | 2021年10月3週 | [[外部リンク]]に絵文字Prefixを追加 | | 2021年11月1週 | 日付ベースのディレクトリ構成に変更 | | 2022年1月2週 | [[Home]]のデザインを刷新 | | 2022年1月3週 | テーマを[[Solarized for Obsidian]]に変更 | | 2022年1月3週 | ディレクトリを極力使わない構成に変更 | | 2022年1月4週 | [[Home]]のトップ画像を変更 | | 2022年1月4週 | 分類にタグを使うよう変更 | | 2022年2月3週 | [[MAMANのITブログ]]正式クローズ | 本記事では最新の戦略のみ説明します。上記の歴史に興味がありましたら過去の[[📰Weekly Report]]や、[[📘Obsidianと過ごした2021年]]をご覧ください。 <div class="link-card"> <div class="link-card-header"> <img src="https://publish-01.obsidian.md/access/35d05cd1bf5cc500e11cc8ba57daaf88/favicon-64.png" class="link-card-site-icon"/> <span class="link-card-site-name">minerva.mamansoft.net</span> </div> <div class="link-card-body"> <div class="link-card-content"> <div> <p class="link-card-title">📘Obsidianと過ごした2021年</p> </div> <div class="link-card-description"> 2021年も終わりです。今年最後の記事はObsidianについて時系列に沿って振り返ってみることにしました。かなり長いので覚悟してください(笑) </div> </div> <img src="https://publish-01.obsidian.md/access/35d05cd1bf5cc500e11cc8ba57daaf88/%F0%9F%93%98Articles/attachments/2021-12-31.jpg" class="link-card-image" /> </div> <a class="internal-link" data-href="📘Obsidianと過ごした2021年" ></a> </div> ## ターゲット [[Minerva]]のターゲットは何よりも自分自身です。==情報を必要としている誰かに伝えたいという想いは優先していません==。 このように言うと、『なら、なぜ[[Obsidian Publish]]を使ってまで[[ノート]]を公開するのか?』と疑問に思われるかもしれません。ただ私は、==優先しない==とは言ったものの==対象外であるとは言っていません==。また、==誰かに情報を伝えることは自分自身のメリットにも繋がる==と考えているため、費用対効果が許せば、優先度が変わることもあります。自分自身に明確なメリットがあるケースは以下のようなものが考えられます。 - 仕事などで一般的な質問をされたとき素早く回答する - 自分の考えを素早く相手に伝える - 開発者としてのポートフォリオ [[Obsidian Publish]]がなければ、都度1から文章にする必要があります。もちろん[[Obsidian Publish]]以外の方法で (たとえば[[Mimizou Room]]のように[[Mkdocs]]で) 実現もできますが、快適さに雲泥の差があります。 これらの性質から、自分以外のターゲット像も明確です。==[[検索エンジン]]などで流入する見知らぬ人は気にしていません。直接リンクで情報共有する知っている人が対象です==。[[SNS]]で共有した場合も同様です。 ## 構成 [[Minerva]]の構成は[[📓Minervaのディレクトリ構成]]に従っています。 <div class="link-card"> <div class="link-card-header"> <img src="https://publish-01.obsidian.md/access/35d05cd1bf5cc500e11cc8ba57daaf88/favicon-64.png" class="link-card-site-icon"/> <span class="link-card-site-name">minerva.mamansoft.net</span> </div> <div class="link-card-body"> <div class="link-card-content"> <div> <p class="link-card-title">📓Minervaのディレクトリ構成</p> </div> <div class="link-card-description"> 📓Minervaのディレクトリ構成 </div> </div> <img src="https://publish-01.obsidian.md/access/35d05cd1bf5cc500e11cc8ba57daaf88/Notes/attachments/minerva-image.webp" class="link-card-image" /> </div> <a class="internal-link" data-href="📓Minervaのディレクトリ構成" ></a> </div> この中で以下の3ディレクトリは認識のない人から見られることも想定しています。 - 👩‍🏫Presentations - 📘Articles - 📗<タイトル> これらをまとめて[[Minervaの公開ノート]]と呼びます。ターゲットの説明で以下のように説明をしましたが、[[Minervaの公開ノート]]は例外的な扱いとなります。 > これらの性質から、自分以外のターゲット像も明確です。==[[検索エンジン]]などで流入する見知らぬ人は気にしていません。直接リンクで情報共有する知っている人が対象です==。[[SNS]]で共有した場合も同様です。 ## 主なルール [[Minerva]]を運営するにあたりいくつかルールを定めて、[[📒Obsidianルールリスト]]にまとめています。 <div class="link-card"> <div class="link-card-header"> <img src="https://publish-01.obsidian.md/access/35d05cd1bf5cc500e11cc8ba57daaf88/favicon-64.png" class="link-card-site-icon"/> <span class="link-card-site-name">minerva.mamansoft.net</span> </div> <div class="link-card-body"> <div class="link-card-content"> <div> <p class="link-card-title">📒Obsidianルールリスト</p> </div> <div class="link-card-description"> ObsidianのルールNoteリスト。書き方は💿MIN-0005 ルールNoteの管理を明確化を参照。 </div> </div> <img src="https://publish-01.obsidian.md/access/35d05cd1bf5cc500e11cc8ba57daaf88/Notes/attachments/minerva-image.webp" class="link-card-image" /> </div> <a class="internal-link" data-href="📒Obsidianルールリスト" ></a> </div> ここでは重要なものをいくつか紹介します。 ### 特別な[[ノート]]のファイル名には[[prefixアイコン]]をつける [[ノート]]は[[prefixアイコン]]で分類しています。[[prefixアイコン]]の定義は[[📓MinervaのPrefixアイコンルール]]にまとめています。 <div class="link-card"> <div class="link-card-header"> <img src="https://publish-01.obsidian.md/access/35d05cd1bf5cc500e11cc8ba57daaf88/favicon-64.png" class="link-card-site-icon"/> <span class="link-card-site-name">minerva.mamansoft.net</span> </div> <div class="link-card-body"> <div class="link-card-content"> <div> <p class="link-card-title">📓MinervaのPrefixアイコンルール</p> </div> <div class="link-card-description"> 📓MinervaのPrefixアイコンルール </div> </div> <img src="https://publish-01.obsidian.md/access/35d05cd1bf5cc500e11cc8ba57daaf88/Notes/attachments/minerva-image.webp" class="link-card-image" /> </div> <a class="internal-link" data-href="📓MinervaのPrefixアイコンルール" ></a> </div> タグやディレクトリを使わない理由は情報量のコスパです。詳しくは[[💿MIN-0003 エントリ名にprefixアイコンを含める]]をご覧ください。 ### [[Minervaの公開ノート]]ではカードリンクを使う [[Minervaの公開ノート]]は不特定多数から閲覧されることを想定するため、他[[ノート]]より見栄えの良さを気にしています。そのため、例外的にカードリンクを使用しています。ただし、[[Obsidian]]にはカードリンクの仕組みがないため、[[Templater]]でカードリンク生成スクリプトを作成し、それを使っています。 <div class="link-card"> <div class="link-card-header"> <img src="https://publish-01.obsidian.md/access/35d05cd1bf5cc500e11cc8ba57daaf88/favicon-64.png" class="link-card-site-icon"/> <span class="link-card-site-name">minerva.mamansoft.net</span> </div> <div class="link-card-body"> <div class="link-card-content"> <div> <p class="link-card-title">📘Obsidianでカード形式のリンクを挿入できるようにしてみた</p> </div> <div class="link-card-description"> Templaterを使って、ObsidianやObsidian Publishにてカード形式のリンクを作成できるようにした話です。作ったリンクは以下のようなデザインになります。 </div> </div> <img src="https://publish-01.obsidian.md/access/35d05cd1bf5cc500e11cc8ba57daaf88/%F0%9F%93%98Articles/attachments/2021-07-25.jpg" class="link-card-image" /> </div> <a class="internal-link" data-href="📘Obsidianでカード形式のリンクを挿入できるようにしてみた" ></a> </div> 上記記事では[[外部リンク]]のみを扱っていますが、[[ObsidianでWikiリンク記法を使わずにInternal Linkを作成]]する方法を使うことで[[内部リンク]]のカードリンクも生成できます。この方法を使うと、ページリロードなしで[[Minerva]]内部のページへ移動でき、ユーザー体験が向上します。 カードリンクは静的に作成したものであり、==[[外部リンク]]の[[URL]]やメタデータ、[[内部リンク]]の[[ノート]]名が変更されたときはデッドリンクとなってしまう==ことに注意してください。これは見栄えの良さとのトレードオフです。そのため、[[Minerva]]では[[内部リンク]]を使ったカードリンクを==[[prefixアイコン]]があり名称変更の可能性が低い[[ノート]]==に制限しています。 ### [[Change log]]を書く [[Minerva]]ではほぼすべてのページに[[Change log]]を書くようにしています。 <div class="link-card"> <div class="link-card-header"> <img src="https://publish-01.obsidian.md/access/35d05cd1bf5cc500e11cc8ba57daaf88/favicon-64.png" class="link-card-site-icon"/> <span class="link-card-site-name">minerva.mamansoft.net</span> </div> <div class="link-card-body"> <div class="link-card-content"> <div> <p class="link-card-title">📓Change logの書き方</p> </div> <div class="link-card-description"> 📓Change logの書き方 </div> </div> <img src="https://publish-01.obsidian.md/access/35d05cd1bf5cc500e11cc8ba57daaf88/Notes/attachments/minerva-image.webp" class="link-card-image" /> </div> <a class="internal-link" data-href="📓Change logの書き方" ></a> </div> 記録するデータは作成日と最終更新日の2つだけです。変更内容は記載しません。過去に記載したことはありましたが、費用対効果が悪かったのでやめました。経緯は[[📓Change logの書き方#経緯]]をご覧ください。 ### ディレクトリはフラットに管理する [[#構成]]でも触れましたが、[[Minerva]]のディレクトリ構造は一部のケースを除き、`Notes`配下にフラットな形で管理しています。以前は分類で構造化したこともありましたが、特に==名称の衝突を検知できない==点が致命的だったため方針を変えました。詳細は[[💿MIN-0012 すべてをNoteディレクトリ直下に配置する]]をご覧ください。 ## 捨ててきたもの [[Obsidian Publish]]の運営にあたり、優先度と費用対効果を加味したうえで捨ててきたものがいくつかあります。すなわち、==やらないこと==の選別です。 ### リンク切れ [[Obsidian Publish]]ではタイトルを変更すると[[URI]]も連動して変わります。つまり、以前共有したリンクはデッドリンクになります。それを防ぐにはいずれかの戦略が必要です。 - タイトル変更を諦める - ファイル名は[[Zettelkasten]]のように無機質な名称にして、[[alias]]で文脈を表現する しかし、これらは[[Obsidian]]で[[PKM]]をするにあたり大きな枷となります。ターゲットは==都度、直接リンクで情報共有する人==であるため、リンク切れは私にとって大きな問題になりません。 また、[[Minervaの公開ノート]]は一度タイトルを決めたら基本的に変更しない方針のため、リンク切れのリスクはほとんどありません。 ### SEO [[Obsidian Publish]]は[[SEO]]に適していません。ただ、[[検索エンジン]]から流入する人はターゲットに含まれていないため、これも問題にはなりません。 ### 表示の[[Obsidianプラグイン]] 共有を前提としているため、[[Obsidian Publish]]に対応していない表示用の[[Obsidianプラグイン]]は使わないようにしています。有名どころでは以下のようなものがあります。 - [[Obsidian Admonition]] - [[Dataview]] [[Obsidian Admonition]]は[[JavaScript]]ファイルを生成することで[[Obsidian Publish]]に対応も可能ですが、コードブロックの利用が強制されるため、[[バックリンク]]が不安定になったり、[[Obsidian]]での表示に影響が出ます。Infoは注記表示で、Warningは[[emタグ(強調)でオシャレなwarning表示]]することにより、上記のデメリットを解消しつつ目的を達成できます。 唯一の例外として、私が開発している[[🦉Embedded Code Title]]だけは使用しています。コードブロックを普通に利用すると、中に[[Obsidian]]記法が入ることはないため問題ないと判断したからです。 <div class="link-card"> <div class="link-card-header"> <img src="https://publish-01.obsidian.md/access/35d05cd1bf5cc500e11cc8ba57daaf88/favicon-64.png" class="link-card-site-icon"/> <span class="link-card-site-name">minerva.mamansoft.net</span> </div> <div class="link-card-body"> <div class="link-card-content"> <div> <p class="link-card-title">🦉Embedded Code Title</p> </div> <div class="link-card-description"> コードブロックにタイトルを埋め込むObsidianのプラグイン。publish.jsとpublish.cssを使えばObsidian Publishでも動作する。 </div> </div> <img src="https://publish-01.obsidian.md/access/35d05cd1bf5cc500e11cc8ba57daaf88/Notes/attachments/minerva-image.webp" class="link-card-image" /> </div> <a class="internal-link" data-href="🦉Embedded Code Title" ></a> </div> ### [[Obsidian Publish]]特有の記法 近々、[[Obsidian Publish]]では未対応だった[[Obsidian]]特有の機能が、[[Obsidian Publish]]でも実装されるという噂があります。機能にもよりますが、==それが動かなくなった場合に[[PKM]]としての役割を果たせなくなる記法は利用しない==つもりです。[[Minerva]]を[[Obsidian Publish]]から移行する障壁となるからです。 個人的には少なくとも数年は[[Obsidian Publish]]を使い続けることになると思っています。それでも、予期せぬ事情で別のサービスに移行する可能性は残るでしょう。極論を言えば、[[Obsidian]]の開発や、[[Obsidian Publish]]のメンテが終了してしまえば移行せざるを得ません。また1から[[ドキュメンテーション]]設計するのはできれば避けたいと思っています。 ### ナビゲーション構成 通常のサイトにあるようなナビゲーション用のメニュー・ツリーは使用しません。[[Obsidian Publish]]ではナビゲーションツリーを表示する機能はありますが、[[#ディレクトリはフラットに管理する]]方針のためほとんど意味を成しません。 代わりに[[Home]]を起点として、関連リンクを[[MOC]]で提示することにより、必要な情報までのルートを確保できるようにしています。これは常に不完全であり、必要な情報までたどり着けないこともあります。その場合はたどり着けるように新たなルート(リンク)を都度作成していけばよいでしょう。これは[[LYT]]の思想でもあります。 ## 終わりに [[Minerva]]の運営戦略について、歴史・ターゲット・構成・ルール・捨ててきたものを紹介しました。実は**捨てたもの**で説明し損ねたものが1つあります。それは**一貫性**です。 [[#Minerva のあゆみ]]にもあるように[[📒Obsidianルールリスト]]は時と共に変わっています。==もし、ルールが変わるたびに全ての[[ノート]]に一貫性を持たせようとしたら、その対応コストからルールの変更を躊躇してしまうことでしょう。しかし、それは[[PKM]]の進化を止める枷以外の何物でもありません。だから、私は一貫性を捨てることにしました==。 [[Obsidian]]に限らず、世の中にある大抵のものは進化と一貫性を両立し続けることは不可能です。未来への一貫性は保証しつつも、過去の一貫性は見切りをつけていく覚悟が何事にも必要であると私は思います。 [[Minerva]]に深く潜ってみると、本記事で説明したルールに反するシーンを目にすることも多いでしょう。しかし、それは意図的に捨てたものです。何かを捨てるからこそ我々は先に進むことができるのです。