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職場で[[ムービング・モチベーターズ]]を行い、自分自身のモチベーションを改めて見つめなおすことができたので、忘れないうちに書き記してみました。
## ムービング・モチベーターズとは
[[ムービング・モチベーターズ]]は[[Management 3.0]]の創始者である[[👤Jurgen Appelo]]氏によって発明されたゲームです。
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<p class="link-card-title">Moving Motivators: A Management 3.0 Game</p>
<p class="link-card-description">One of the easiest and definitely most fun ways to delve into intrinsic motivations is to play Moving Motivators. Find out more!</p>
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<p class="link-card-title">チームメンバーのやる気スイッチ、内発的動機、モチベーションを見える化するカード「ムービング・モチベーターズ」とは? | NüWorks</p>
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[[ムービング・モチベーターズ]]では、様々な動機を表した10のカードを使用し、以下のようなステップで実施されます。
1. 各々が重要と考えるカードを選ぶ
2. 変化がモチベーションに与える影響を話し合う
3. モチベーションについて振り返りとディスカッションを行う
私が今回行った際も似たような流れを踏みました。ただ、2については『変化』ではなく、あくまでカードを選んだ理由の共有に集中しました。
1. 各々が重要と考えるカードを選ぶ
2. 選んだ理由を1人ずつ他メンバに共有する
3. 全体でディスカッションを行う
その中で『変化』の話題が出たかもしれませんが、あくまで『モチベーション/動機/価値観の共有』という点に集中したかったからです。
## 私が選んだ3つのカード
今回、私が選んだカードは以下の3つです。
| カード | 但し書き |
| --- | ---------------------------- |
| 自由 | 私は自分自身の仕事と責任で他人から独立している |
| 熟達 | 私の仕事は難しいが、まだ能力の範囲内になる |
| 関係性 | 私は仕事でかかわる人々と良好な社会的つながりを持っている |
正直なところ、但し書きよりもカードの名前で決めました。そのため、カードを選んだ理由は但し書きの内容とずれている箇所があります。でも、私はそれでいいと思っています。このゲームの目的はモチベーションの共有や掘り下げであるため、そこから話が広がったのであれば問題ないかなと。
それぞれのカードを選んだ理由について、ここから紹介していきます。
## 『自由』 目的が抽象化されていれば手段は問われたくない
私が『自由』を選んだのは、**手段が自由であること**を強く重視していると感じたからです。目的が抽象化できるのであれば、それを実現する手段(プロセス)は問われたくない。そして問いたくないと思っています。例を挙げてみましょう。
### 標準プロセスとしてのVSCode
あるチームで[[TypeScript]] x [[Vue]]のプロダクトを開発をすることになったとします。プロダクトのREADMEには、さも当然のように[[VSCode]]を使った環境構築手順が書かれています。さて、どうでしょう。ここで頭に『?』とクエッションマークが浮かび上がりませんか。**『[[Neovim]]で開発すればよくない?』**
当然、チームもあなたに嫌がらせをしたいために[[VSCode]]の手順を記載していたわけではありません。それがチームにとって最善だと感じたからでしょう。[[VSCode]]を使うことのメリットは容易に想像つきます。まあ、こんなところでしょう。
- 無料で申請不要
- 十分に快適な開発環境
- 世間でも社内でもデファクトスタンダードと言える存在
- チームの開発者が慣れておりサポートできる
- [[TypeScript]]との親和性 ([[Microsoft]]が開発しているので)
結果的にチーム開発や新人のオンボーディングも効率化できると思います。実に合理的。**『でも、私は[[Neovim]]を使いたいんだ!!』**。
### 自由には責任が伴う
いいじゃないですか、[[Neovim]]。使えばいいと思います。ただし、**自由には責任が伴う**というのが個人的な主張です。具体的には、[[Neovim]]を使うことで以下を保証できるかということです。熟練の[[Neovim]]ユーザーであればこの点はクリアできることでしょう。
- 料金や申請が発生しないこと
- [[VSCode]]を使ったときと比べて開発効率が落ちないこと
- チームのサポートがなくても開発効率が落ちないこと
- [[TypeScript]]との親和性が[[VSCode]]に劣らないこと
一方で、以下の点は厳しいと思います。
- チームメンバにも役立つ開発環境ノウハウの共有
- [[Neovim]]のノウハウを書いても利用者がいなければ効果はほぼゼロ
別の[[Neovim]]ユーザーが入ってきたときはスムーズになりますが、その可能性が低ければ低いほど異質な立場になります。やはり、**『他のメンバーに迷惑をかけず、チームのアウトプットを下げないこと』** あたりが限界かなと。
このような自由を、**認めてもらいたいし認めてあげたい**。
それこそが、私が『自由』を選んだ最も大きな理由です。
## 『熟達』 大いなる力があってこその自由である
実のところ、5年前にやったときは『熟達』は最も優先度の低いカードでした。それが今では3TOPの一角になりました。そのようになった理由は2つあります。
### Obsidianが成長の楽しさを見出してくれた
一番の大きな転換期は2020年末、[[Obsidian]]との出会いでしょう。
私は以前から、仕事以外でもスキル習得をしたり、個人プロダクトを色々作ったり、[[プロダクティビティ]]について思いを馳せたりいていました。ただ、そこでは常に個人プロダクトの開発が第1の目的となっていた気がします。もちろんこれは悪いことではありません。むしろ動機付けしやすいという意味では好ましいことでしょう。
しかし、[[Obsidian]]に出会ってからは優先順位が変わりました。相も変わらず、プロダクトの開発は主目的の1つであります... が、それと同じくらい自分自身のスキルアップやノウハウの蓄積に重きを置くようになりました。2021年夏の時点でそれは確信に変わっていました。
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<p class="link-card-title">📘Obsidianは10年後の礎になると半年間使って確信した話</p>
<p class="link-card-description">Obsidianを使い始めてからちょうど半年が経過した。これまでの体験から私は自信をもって言える。Obsidianは次の10年の礎になるツールであると。</p>
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<a class="internal-link" data-href="📘Articles/📘Obsidianは10年後の礎になると半年間使って確信した話.md"></a>
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%%[[📘Obsidianは10年後の礎になると半年間使って確信した話]]%%
### 職場での立場が少しずつ変わっている
この5年間、所属や役職はあまり変わっていません。ヒューマンマネジメントやプロジェクトマネジメントをする立場ではなく、多くのプロジェクト[^1]に所属する1開発者のままです。
[^1]: 大体5~7くらいのプロジェクトを兼務しています
変わったのはむしろ周りかもしれません。私が個人的に尊敬していたつよつよエンジニアの方がそれなりに退職(転職)されていき、結果として、残された者達の中での立場が相対的に上がった気がしています。まあ、5年経てば普通に変わるよね... というのも当然ありますが...。
そうなると、自分自身で新たな世界を開拓したり、新しい試みにチャレンジしていくしかない機会が増えます。10年前くらいからそのようなポジションで仕事をしてきたつもりではあります... が、自分が動かないと変わる要素が少なくなった気がする今の方が、明らかに責任が伴うと感じています。
そこで大事なのは、やはりスキルです。現時点では、今後の人生もエンジニアとして現場で生きていきたい...と思っています。そのためにも、他の人より1つも2つも先を走れるような圧倒的なスキルが必要だと感じます。
### 量よりも質
スキルアップには学習や経験が必要です。学習や経験を積むためには時間と集中力が必要です。しかし、それらは若い時と比較して劣ることも多いでしょう。その状況を打破するにはやり方を変えるしかないのです。
- [[PKM]]を習得して学習効率を上げる
- タスクマネジメントで無駄をなくす
- タイムマネジメントで集中力/モチベを上げる
スキルアップするためのスキル... こういった普遍的なスキルが必要になります。幸運にも[[Obsidian]]と出会えたので、これらの仕組みを構築して軒並みスキルアップにも成功しました。私が[[PKM]]で採用している独自のシステムについては以下をご覧ください。
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<p class="link-card-title">📘丸3年Obsidianを利用して培ったノート戦略を体系化してみた</p>
<p class="link-card-description">ObsidianとObsidian Publishを3年間使い続けて培ったノウハウを言語化した『MKMS』を紹介します。全部で9種類あるノートの定義を、私がメンテしているサイト『Minerva』における具体的なページを添えて説明します。</p>
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%%[[📘丸3年Obsidianを利用して培ったノート戦略を体系化してみた]]%%
### 熟達あってこその自由
先ほど『自由』について述べました。
> 別の[[Neovim]]ユーザーが入ってきたときはスムーズになりますが、その可能性が低ければ低いほど異質な立場になります。やはり、**『他のメンバーに迷惑をかけず、チームのアウトプットを下げないこと』** あたりが限界かなと。
個人的には、この要件を満たすために『熟達』は必須であると考えています。未熟な状態で『自由』を優先させたら、そこに残るのは劣化したチームのアウトプットという残念な結果になるは目に見えていますから。『自由』を得るためにはある程度のパワーでごり押しする必要があります。
そのような『自由』を認めてもらうためにも、『熟達』していることは必要であり、そこにもモチベーションがあります。
## 『関係性』 チームで成し遂げることはやはり面白い
『関係性』は『自由』と並んで、はじめて[[ムービング・モチベーターズ]]をプレイしたときから3TOPに入り続けているカードです。
### 正にも負にも振れるチームプレイ
チームとは必ずしもプラスに生じるような単純な要素ではないと思っています。`1 + 1 = 2` にならないのは勿論のこと、場合によっては `1 + 1 = 0.5` のような自体にもなりかねません。ここに『関係性』が大きくかかわってきている気がするのです。
熟練のメンバーだけでチームを組むとうまくいくのか... 皆が同じ価値観とベクトルを持っているか、個を尊重するような関係であればうまくいくでしょう。一方で、価値観があわず衝突するような同じレベルのメンバーがいる場合、常にチームは混沌の渦と化して生産性は大きく下がると思います。それは本当に1人でやった方が良いと言えるほどに。
逆に、熟練メンバーと新人からなるチームでそれ以上の力が出る場合もあります。典型的なケースとしては、熟練メンバーが新人に興味を持ち、新人も素直で向上心がある場合でしょう。熟練メンバーが新人に無関心で野放しにしたり、新人が頑固で熟練メンバーの誘いを拒絶するような環境では、お互いフラストレーションがたまるだけだと思います。
### 相手を知る
そのようなことにならないよう、自己を開示して適した『関係性』を構築する機会というのは思っている以上に大事だと思います。何を隠そう、私が[[ムービング・モチベーターズ]]を主催することが多い理由の1つがそれです。
普段の雑談や1on1では価値観についての話をしてくれないような人でも、[[ムービング・モチベーターズ]]の場ではかなりの確率で自己開示してくれます。そのような場をセッティングすることは、チーム力を向上させるためにとても大切なアクションであると私は考えています。
なお、私が最も嫌いなことは **『他者に自分の価値観を決めつけられること』** です。予想してもらうのは好きにしてもらっていいのですが、決めつけられることは結構キツイと感じています。それは、本人の意見よりも自分の直感を信じるスタイルであることの自白に他ならないのですから。
### 人間は理論と感情で動く
『熟達』のセクションで以下のように述べました。
> 個人的には、この要件を満たすために『熟達』は必須であると考えています。未熟な状態で『自由』を優先させたら、そこに残るのは劣化したチームのアウトプットという残念な結果になるは目に見えていますから。『自由』を得るためにはある程度のパワーでごり押しする必要があります。
>
> そのような『自由』を認めてもらうためにも、『熟達』していることは必要であり、そこにもモチベーションがあります。
理論的な人であれば納得してくれるかもしれませんが、すべての人がそうとは限りません。何しろ人間は感情で動く生き物でもあります。『言いたいことは分かるけど... チームに協調してよ...』と言われてしまうこともあると思います。
だからこそ、『関係性』というのは非常に重要なパラメーターです。あらかじめ相手のことを知っておけば、こちらが望む未来を引き寄せるための戦略を練ることができます。そして何よりも、こちらが『自由』という価値観を重要視していることを相手に伝えられます。その上で落としどころを探っていくのが現実的かなと。
## 消えた『受容』
私が選んだ3つのカードについての説明は以上です。が、1つだけ補足させてください。先ほど、『熟達』のセクションでこのように述べました。
> 実のところ、5年前にやったときは『熟達』は最も優先度の低いカードでした。それが今では3TOPの一角になりました。そのようになった理由は2つあります。
つまり、5年前は『熟達』に代わる別のカードがあったということです。それは『受容』です。
| カード | 但し書き |
| ------ | ---------------------------------------------------------- |
| 受容 | 私の周りの人が、私がやっていることや私らしさを認めてくれる |
自分のやることを受け入れてもらいたい。大抵の人がそう思うのは当然のことでしょう。私もそう思っていたからこそ、5年前には『受容』を3TOPの一角に選んでいました。しかし、そこには大きな罠があります。
### 『受容』されない領域にこそ時代の先端がある
『熟達』のセクションで次のように述べました。
> そうなると、自分自身で新たな世界を開拓したり、新しい試みにチャレンジしていくしかない機会が増えます。10年前くらいからそのようなポジションで仕事をしてきたつもりではあります... が、自分が動かないと変わる要素が少なくなった気がする今の方が、明らかに責任が伴うと感じています。
このような動きをするためには**他の人とは違った観点で物事を進めていく必要があります**。言い換えると **他の人から諸手を挙げて同意されにくいことを自分を信じて進めていく** 必要があるのです。
```
私『〇〇っていいですよ! たとえば△△みたいなことができるんです!』
相手『へぇ~よさそうですね (イマイチ良さが分からないので相槌しとくか...)』
```
大人の対応をしてもらった場合でも胸の内ではこのようなことも多いのではないでしょうか。大多数の人は流行ってもない前例ないものを即座に受け入れられるほど柔軟ではないと思いますので。
『受容』を重視する価値観を引きずっていると、この時点でかなり辛い想いをすることになると思います。なにしろ受容されないのですから。素晴らしいと思って共有したことが、本当は必要としている人たちから完全にスルーされること... なんとかしてそこに届けるため執拗に迫ったりすることが問われます。『相手の気持ちにあわせて気持ちよく仕事をしたい』と感じる日々になることは想像に難くありません。
ですが、**『受容』されにくいことにこそ未来の価値を創造する可能性を秘めている**と私は思うようになってきました。その時からです。私が選ぶ3つのカードから『受容』が姿を消したのは。
## まとめ
5年ぶりに職場で[[ムービング・モチベーターズ]]を行い、自分自身のモチベーションとその変化を分析してみました。
私が一番重要視しているカードは『自由』です。他のカードは、その『自由』を守るために選ばれているといっても過言ではありません。『熟達』なしに『自由』を得ることは難しいでしょう。また、スキル以外に人間関係も『自由』を得るために大切な要素ですので、『関係性』も大事です。
今回挙げていませんが『権力』も『自由』のために必要な要素です。4番目のカードを選ぶとしたら、おそらく『権力』になるでしょう。
| カード | 但し書き |
| ------ | ------------------------------------------------ |
| 権力 | 私の周りに起きることを自分で左右できる裁量がある |
[[ムービング・モチベーターズ]]の結果は予想通りになることもあれば、普段思ってもみなかった結果に終わることもあります。チームメンバーや自分自身の知られざる価値観とその理由を探るために一度プレイしてみてはいかがでしょうか。
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<small>※ 本ページのイラストはAI(DALL·E)により生成されたものです</small>